パパが大好き

すばるは大学生になった。

反抗期らしい反抗期も無く、

タクヤとは父と娘にしては珍しく仲良しすぎるくらい仲のいい親子だった。

その日もいつものように一緒に夕飯を食べて家でくつろいでいた。


「ねぇパパ、今度の日曜日バスケなの?」

すばるは壁にかかったカレンダーに書いてあるメモを見てタクヤに聞いた。

「うん。いつもの仕事の仲間たちと練習試合だよ。」

「へぇ。ねぇ、久しぶりに私も見に行きたい!」

もう少し小さい頃はよくすばるも来ていたが、ここ何年かは日曜日は友達と遊ぶことが多くなり、見に来ていなかった。

「珍しいね、いつも日曜はリエちゃんとかと遊んでたじゃん。」

「うん、そうなんだけどさ…みんな大学のサークルで忙しいから。それにひさしぶりにバスケしてるパパが見たいの。ダメ?」

特にダメな理由なんて無い。
それにそんな近くで子犬のような顔をされても困る。

タクヤはいいよ、と答えた。

「13時からだよ。」

「やった!うっふふ、楽しみだなぁ!じゃあお風呂先に入るね!」

そういってすばるはルンルンと部屋を出て行った。

「……ハァ」

タクヤは分かっていた。
すばるは大人になるにつれ、タクヤのことを父親以上に見るようになってきたこと。

自分を見る目が恋する少女のそれになってきたことを、タクヤはちゃんと気づいていた。

1番身近で血も繋がってない異性だから仕方ないのかもしれないけど。

手を出すなんてそんなことありえないし、すばるの幸せのためにも誰かいい人を見つけて欲しいと思う。

年の差も12歳しかないので、外で一緒に歩いていると時々夫婦や恋人同士に間違えられることもあった。

すばるは常にタクヤと手を繋いだり腕を組んだりするから余計だった。

これではいかん…俺がかわいがりすぎてファザコンになってしまったのか…?と自問するのであった。

とにかく、大学生にもなったことだし、そのうち彼氏でもつれてくるだろうと思うことにしていたら、

つい先日「ショータ」とかいう男に惚れ薬を飲まされて大変なことになったのだが。

あの時はすばるの妹たちに世話になった。もし助けられてなかったら…(※「我ら呪術ブラザーズ!」参照)

タクヤはどうしただろう。

自分から目を逸らさせるために一度は薬の力になびいてしまったけど、

もしあのままだったら…

「パパ、お風呂出たよ」

すばるの声にタクヤはハッと我に帰る。

「ああ、わかった。」

タクヤも風呂に入った。



日曜日は晴れてスポーツ日和となった。

すばるとタクヤは久しぶりに車で一緒にバスケコートがある建物に向かった。

「キャー!!パパ、頑張って!!」

すばるは大はしゃぎしながら黄色い声援を送っている。

タクヤが一点決めると声援はさらに大きくなった。


結局練習試合はタクヤのチームの勝ち。仲間達と喜び合って片付けをしていると、仲間の1人がすばるに話しかけていた。

「君、見ない顔だね。初めて?今日すごい応援してくれてたよね」

「あ、はい!初めてじゃないんです!久しぶりで…その、私パパの」

「俺の娘だよ」

タクヤが横から割って入った。

「えっ!あのすばるちゃん?うわー可愛くなったなぁ、俺ナンパしようとしちゃったよ…」

「バカ。俺が許さないっつーの」

「俺はタクヤの彼女かと思ったよ。ずいぶん可愛い子見つけたなーって思ってた」

もう1人の仲間も来てよりにもよってそんなことを言い放った。

「パパの彼女だなんて、そんなぁ…」
とか言いながらすばるは赤くなっている。

オイオイ…とタクヤは内心ため息をついた。

「でも本当に大きくなってさらに可愛くなったよなあ。こんな可愛いんじゃ色んな奴に狙われちゃうぜ。タクヤ、気をつけないとな!」

ワハハ、と仲間たちは笑っている。

「ハイハイ、そうだな」

と適当に流してその場はおさめた。
「パパ、今日もすっごくかっこよかった!パパが一点決めたときね、動画撮ろうとしてたんだけど嬉しくてはしゃいで撮れなかった!フフッ」

とか言いながらすばるは嬉しそうに駐車場からレストランまでの道をタクヤの腕に絡みついていた。

「うんうん。ありがとな。」

タクヤにしたらかわいい娘なので、つい子供の時のように頭を撫でたりしてしまう。

すばるは弾けんばかりに嬉しそうだ。

シーフードレストランで夕飯にした。

「なぁ、すばるは今好きな人とかいないのか?大学で新しい出会いもあったろ」

タクヤは何気なく聞いてみた。

「うん、そりゃ、大学で色んな人に出会ったけど、好きになるような人はいないよ。なんでか一瞬ショータさんのこと好きだったけど今全然好きじゃないし…
別に彼氏欲しいとも思わないしさ。私はパパと一緒にいられればいいもん」

やっぱりそうなっちゃうのか。タクヤは苦笑いした。

「すばるも大人になるんだから、俺とばかり一緒にいてもしょうがないだろ。別に彼氏を作れって訳じゃないけど、いい奴はたくさんいるから、色んな人に会うのもいいことだぞ」

「ええ…?でもパパよりかっこいい人なんていないもん」

すばるはロブスターのグラタンに手をつけずに膨れっ面をした。

「パパと仲良くしたらダメなの?リエちゃんもそういうこと言うし、なんか、嫌になる。」

「リエちゃんも?」

「うん。そんなにパパが好きなの変だって。すばるは誰か彼氏作った方がいいって。私には何が変なのかわかんない。みんな、パパのことは好きでしょ?」

友達にまで指摘されてたのか…だから最近会わなくなったんだな、とタクヤは思った。

それよりすばるが泣きそうな顔をして下を向いている。そろそろ話題を変えねばとタクヤは向き直る。

「俺たちは親子なんだから、すばるがパパを好きでもおかしくないよ。俺だってかわいい娘のすばるが好きだ。ごめんな、もうこの話はやめよう。デザートにケーキ食べる?」

すばるはタクヤに好きだと言われて機嫌がなおったようで、うん!と答えるとグラタンを頬張った。

「私チョコケーキ!パパはいつものピスタチオジェラートでしょ?」

「うん。あれ以外考えられないね」

アハハ、とすばるは笑った。

お腹いっぱい食べて帰宅すると、すばるは疲れたようでお風呂に入ってすぐ寝てしまった。

タクヤは考えていた。

離れて過ごす時じゃないかと。

すばるのためでもあるし、タクヤのためでもあった。

自分が子離れできない怖さもあったのだ。

色々考えて、泪に電話した。

「泪、悪いな夜分に。ちょっと相談があるんだ。今シュリはシェアハウスにいるよな?どんな感じか教えてくれないか」

タクヤの言葉に色々と悟った泪はその日遅くまで電話で相談に乗ったのだった。







0コメント

  • 1000 / 1000

空想都市一番街

このサイトは管理人「すばる」の空想の世界です。 一次創作のBL、男女のお話、イラスト、漫画などを投稿しています。 どうぞゆっくりしていってくださいな。