銀の子羊と、優しい獣⑦ ☆BL

マンションに着くと、拓也はお茶を入れてくれて、着替えも用意してくれた。

「カートコバーンのTシャツ。カッコいいすね」

「だろ?やらねえぞ」

前来たときと同じように言って拓也は笑った。

「風呂一緒に入る?」

Tシャツを脱ぎかけて、思い出したように拓也が言う。

「あ、いや、それはまだいいっす!」

まだいいって何だ、と自分でツッコミを入れつつ悠斗はぶんぶんと首を横に振った。
よく分からないが、急にそれは恥ずかしい。

だよな、と拓也も笑った。半分冗談だったようだ。

拓也の後に悠斗もシャワーを浴びて着替えてさっぱりした。

拓也は、悠斗が何を求めてくるのかと様子を見ていた。

「あの、拓也さん」

「ん?」

「一緒に寝てくれますか?」

椅子に体育座りで腰掛けて、気だるく首を傾げてお願いしてくる姿には誰も嫌だと言えないパワーがある。

「いいよ」

拓也が微笑むと、悠斗はパッと明るい顔で微笑んだ。

「ふふ、やった」

まるで子供みたいだ。

「ちょっとメールだけ返したら寝るから、お前先に横になってて。俺もすぐ行くから」

拓也はメガネをかけてパソコンに向かった。

パソコンは拓也の部屋の中にあるから、悠斗はベッドに横になりながらその姿を見ていた。

「拓也さん」

「ん?」

「メガネ似合いますね。新鮮」

「そう?いつもコンタクトだからな」

メールが終わると、拓也はメガネを外そうとした。

「待って外さないで。そのまま来てください。」

「え?このまま?」

悠斗がうんうんとうなづくので拓也はそのままベッドに座った。

「そんなに新鮮?」

笑って言う拓也に悠斗はうなづく代わりに微笑んだ。

「なんか…」

悠斗の両手が拓也の両頬を包んだ。

体を起こした悠斗は、拓也にキスをした。

「メガネしててキスしづらいのっていいですよね…」

と言いながら悠斗はそっと拓也のメガネを取った。

「へへ、拓也さん真っ赤」

「そりゃ急にそんなことされたら、しょうがないだろ」

悠斗のちょっとおちょくる様な表情は反則レベルの色気だ。多分意識してないんだろうけど。

こうやって女たちを落としてきたんだろうなぁと拓也は思った。

「ふふ、ごめんなさい。早く、一緒に寝ましょ」

悠斗が抱きついてきて拓也をベッドに引きずり込んだ。

「うわ、もう、お前は。」

悠斗は拓也にぎゅっとしがみついてスリスリと胸に顔を押し付けている。

拓也はそんな子供みたいに甘える悠斗の頭を優しく撫でた。

「甘えたかったんだな。よしよし」

「俺、女の人とはたくさんこうしたけど、男の人って初めて。しかも拓也さん。スッゴイあったかい。胸も広いし。安心する」

「そっか。そりゃあお前なら女にはいくらでもモテるだろうからな。女では安心しなかったの?」

拓也が胸の中の悠斗を見下ろして言った。

「うーん。年下の子は俺が可愛がる感じだし、年上の人は可愛がってくれるけど、なんか違うかなって…」

「贅沢なやつだな。」

拓也は笑った。

「拓也さん俺、もう一回キスしたい」

悠斗が見上げてきた。

「お願い。」

拓也は軽く悠斗にキスをした。

「はい。したよ?」

悠斗はふくれて物足りなそうにしている。

「どうして欲しいのか、もっとちゃんと言ってみな?」

なにそれ。
悠斗の知らない拓也のスイッチが入ったようだ。

「もっと…深くして」
「こう?」

拓也は悠斗の頬に手を当てながら、今度は深くキスをした。

「ん…ふ、そう…」

「なあお前…明日バンドの打ち合わせなの?」

拓也が耳元で囁いた。

「ちがいます、嘘です…」

「やっぱりね」

悠斗は咄嗟についた嘘を見破られていたのが恥ずかしかった。

「ひぁっ…!」

そんな時に首にキスをされたから、変な声が出てしまった。

「ふふ、感じてんの?」

感じてるのである。
こんなことされて感じないヤツがいたら不感症だよ、と悠斗は思った。

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