朝、拓也のベッドで目覚めると、拓也は朝食を用意してくれていた。
「おはよう。よく寝てたな。朝メシ食べようぜ。」
テーブルにはカフェご飯かと見紛うおしゃれで美味しそうなサラダやパンやスクランブルエッグが並んでいる。
「拓也さんが作ったんですよね?なにこれ超かわいいし美味しそう」
「だろ?俺料理好きだから。いっぱい食べな。飲み物なにがいい?コーヒー?」
「あ、コーヒーをブラックでお願いします」
悠斗は席に着くと腹が鳴った。昨夜、色々とだいぶエネルギーを使ったから。
「さあ食べよう。いただきます」
「いただきます」
拓也の料理は本当に美味しかった。
「今日俺遅番だ。お前はなんかあんの?」
「はい、バンド練です。西町で17時から。」
「そっか。次ライブいつ?」
「今週の土曜です。インディーズレコ屋の隣のライブハウスで。そこでやんの初めてなんですけどね。結構いい箱みたいで」
「ああ、アツシの店の隣か。あそこいいよな、小さめだけど音響も良くて。楽しんでこいよ」
悠斗は微笑んでうなづきながらりんごジャムのトーストを頬張った。うまい。
「まさか、このジャムって拓也さんの手作り?」
「そう。うまいだろ?うちの婆さんの実家がりんごの産地でさ。りんごたくさん送ってきたから、この間ジャムにしたんだよ」
拓也さんがジャム作り…
普段の一見クールで兄貴肌で男らしい拓也からは想像もできない。
「なんだよ俺がジャム作るのそんなに意外?」
「だって誰も思わないでしょ、拓也さんがジャム作ってるなんて。」
「そう?じゃあギャップ萌えに使えるな。仕事でやってみるかな。
名刺と一緒に、俺が作ったジャムです、って」
悠斗は吹き出して笑った。
「あのカッコしてジャムの瓶持って?」
「そうそう。今度やるわ」
拓也の冗談に2人して笑った。朝の食卓は和やかだった。
こんな朝を迎えたのはいつ以来だろう。朝ってこんなに幸せな気持ちにもなれるんだな。
毎日朝は急いだりイライラしたり悲しかったりギスギスしたり。
そんなんばっかりだったけど。
すごく癒される。
悠斗はやさしい気持ちで拓也との朝を過ごした。
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