響は時々夢に見る。
幼い夏の日。母と出迎えたあの人のことを。
とても優しく穏やかな目をした、父の弟…響の叔父。
一度しか会っていないのに、響はその人の記憶が鮮明に残って忘れられない。
あんなに引き込まれそうな優しい目をした人に会ったことがなかった。
ほんの数日滞在して、叔父は都会へ帰ってしまった。
それきり、響が16歳になる今まで叔父には会っていない。どこにいるのか、母にも分からなかった。
だけど響はきっといつか会えると思っていた。
だってあの時、叔父は幼い響に言ったのだ。
生々しい傷痕の残る右手で、不器用に響の頭を撫でながら
今でも夢に見るあの言葉を。
「響もいつかおいで。僕のところに。君に僕の作った音楽を聴いてほしい」
響を撫でる叔父はとても優しく、儚く、けれど底知れない力を秘めたような深い目をしていた。
響は大きくなるまで、一度もあんな目をしている人に会ったことがない。
場所は分からないけど、都会のどこかで叔父は作曲家をしているらしいことは分かっていた。
響はいつか必ず叔父を見つけて会いにいくのだと心に決めていた。
空想都市一番街
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