振動と周波数な哲学? ※死について

「ハァ…何かあるたびいつも君に聞くの癪だなぁ。しかも今日、ここはどこ?」

僕はため息をつきながら言った。

「音楽スタジオだよ!最新の機器が揃ってるよ。私は人間の作る音楽が好きなんだ。時々ね、時空越えちゃう音楽作る人がいるんだよ。面白いよね」

アオは楽しそうに機器をいじっている。

「それで?今日は何が聞きたいの?」

アオは機器をいじりながら聞いた。

「うん、死んだ人に声って届くの?」

「うはは、またそういうことを。死についてはこの前言ったじゃない、明白かつ不確定に…」

「ストップ!それよく分かんないから。僕が声に出したり心に思ったことが届くのか知りたいの」

「ああそう…。君は、振動って分かるよね。周波数とか」

「それくらいは分かるよ」

「じゃあ分かるでしょ。届くの当たり前だってこと」

アオはまた僕を置きざりにして1人で楽しんでいる。

「うーん…お願いだから、人間の目線で教えてよ」

「人間の…あ、そうだったね、ごめん」

アオは伸びをして僕の方に向き直った。

「みんな振動してるでしょ。それは細胞のもっと小さい場所から、ずっと大きな宇宙まで。振動してないものはないのさ。
生きてても死んでても、関係無く。全てのものは振動してる。動いてない様に見えるものも、振動してる。その見えない振動で私たちは繋がってる。」

「それで声も届くの?」

「声も振動だろ。もっと言えば真空の宇宙では思念が声の様なもの。これも振動。
だから、細胞の奥を見てご覧。ミクロの粒子が宇宙の様に動いてる。
そこいらじゅうで。万遍なく。全部繋がってる。心の振動は繋がってる。だから届くよ。ちゃんと聞こえるよ。分かったね」

僕はうなづいた。

「『その人』にちゃん届くから安心しな。」

アオは僕の心を見透かしたように言った。

「この前言ってた君のその友人に、ちゃんと届くよ。
本当に人間は何にも知らないから大変だな。
そんなに心配しないでも、世界は全部うまく出来てるから大丈夫だよ」

アオの言葉に僕はホッとして、そのままテーブルに寄りかかって眠ってしまった。

「音楽は人間が作る振動の絵画みたいなものかな…あれ、寝ちゃってる。ふふ」

アオは上着を僕にかけた。

「もっと深いところで、君たちはとっくの昔からコミュニケーションしてるのに。
気づかない人間て不思議だなあ。というか…君はいつまで自分が人間だと思ってるんだろうね?
…ま、いっか。音楽聞こうっと」

アオは機器をいじって好きな音楽を楽しんだ。


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