すばるは迎えに来たタクヤの車(ハチロク)に乗って実家に帰った。
迎えてくれたタクヤの顔はいつもと変わらないのに、なぜかいつもよりカッコよく見えた。
家に着いたらまず、朝から頑張って作ったお菓子をタクヤに渡した。
普通の顔で渡そうとしたのだけど、なんだか恥ずかしくて顔が赤くなってしまった。
タクヤはすばるを取られまいと必死でバレンタインのお菓子のことなんてすっかり忘れていたので、びっくりしながら受け取った。
可愛くラッピングされた箱の中には山盛りのチョコクッキーとマカロン。
「うわ、すごいね、手作りだ。ありがとう」
タクヤもなんだか照れくさかった。
最近は腕を組んだりすることはしていなかったのだけど、
すばるはタクヤの腕に絡みついたり、ソファでピッタリくっついてくつろいだ。
「パパ、おいしい?」
「うん、すごく美味しいよ」
すばるは嬉しくて何度もタクヤに聞いた。
その度にタクヤも、何度でも答えた。
久しぶりに距離が近く、お互いにリラックスして過ごした。
以前と少し違うのは、お互い触れる手の感覚。
今までと違う愛情がそこにあった。
その日は二人とも口にはしなかったけど、お互いに理解していた。
親子としてではなく、
愛しているということ。
それでも一線は越えなかった。
けど今の二人はそれでよかった。
実家でゆっくり過ごし、次の日帰る時、タクヤはすばるを抱きしめた。
「一緒にいられてよかった。ありがとう。」
すばるが目を合わせて、うん!と微笑むと、タクヤはすばるのおでこにキスをした。
「わっ!ふふ」
すばるもタクヤのほっぺにキスをした。
「試験がんばって。卒業式の後、卒業祝いのコンサートを泪とやるから、来てね」
「え!AZEMICHI (タクヤと泪のユニット)の?すごい嬉しい!!」
嬉しい知らせと共にすばるはシェアハウスに帰った。
帰るとシュリがリビングルームで寝転がっていた。
「おかえり。いい日を過ごせただろ?」
シュリが微笑んで言った。
すばるも笑って答えた。
「うん!これ、シュリのお菓子だよ!」
「うわ、うまそー!ありがと!」
二人はいつもと同じように、一緒に喋りながらお茶を飲んだ。
すばるの幸せそうな顔にシュリは切ない喜びを感じた。
あーそれにしてもあの時の本気になったタクヤの声、すばるにも聞かせてやりたかったな、とシュリは笑った。
空想都市一番街
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