その日はよく晴れた。
絶好の卒業式日和だ。
すばるとシュリは一緒に大学に向かった。友達のレナは先に着いていた。
「おはよう。ついに来たね。」
レナはすばるの顔を手で包んで微笑んだ。
「うふふ。もう卒業なんだね、私たち」
なんだか信じられないくらい、短かったような、でもいろんなことがあったような。
それぞれの道を歩いていくことへの希望と、別れの寂しさ。
今日大学にいる卒業生のみんながそれを感じていた。
「さぁ、着替えに行こうぜ。学長のスピーチもあるし。」
シュリが声をかける。
三人は更衣室で黒い制服を身につけて帽子を被った。
今までの努力が、この姿に現れている。鏡に映る姿を見てすばるは思った。
卒業式は滞りなく進められた。
ひな壇に並んだ卒業生たちは学長のスピーチに涙したり勇気づけられたり。
これから社会に出ていくのだ。
みんなその希望を胸に、卒業式を終えた。
式にはタクヤもルイも来ていた。
「卒業おめでとう。立派な姿だね。4年間、頑張ったな」
タクヤは本当に嬉しそうにすばるに言った。あの小さかった少女が、こんなに大きく立派になった。
「ありがとうパパ。私パパのおかげで大人になれたよ。」
すばるも深く感謝していた。この人が見捨てないで育ててくれたおかげで、大人になれた。
「シュリ」
シュリは声に振り返るとルイが近づいてきていた。
「ルイ!見て、俺、大人になっただろ?」
嬉しそうに姿を見せるシュリ。
「うん。すごく立派だよ。あの小さかった君がこんなに大きくなって…お母さんに見せてあげたい。きっと今頃見てるかな。優里ちゃん。」
ルイはいつものように優しく言った。
久しぶりにシュリの母の名を口にして。
「母さん、喜んでくれてるかな」
「もちろん!優里ちゃんの大事な息子なんだから。誰より喜んでるよ。」
シュリは嬉しかった。新しい母のことも好きだったが、ルイはいつも亡くなったシュリの母も大切にしてくれた。新しい母でさえ、シュリの母を心から大切にしてくれた。
俺は家族に恵まれた。
そう思った。そしていつも愛してる、と亡き母に心の中で思うのだった。
「レナ、卒業しても、友達でいてね。体に気をつけて頑張ってね」
すばるは病院勤務が決まっていたし、レナは兼ねてから活動していた音楽活動が軌道に乗り、メジャーデビューすることになっていた。
「もちろんだよ。すばるはあたしの親友だから。あんたこそ、幸せになりなよ」
すばるは母を赤らめて、うん、とうなづいた。
「今日のAZEMICHIの卒業式ライブ、あたしも招待されてるから。一緒に行こうよ。シュリも」
うん、と答えて、すばるは空を見上げた。
久しぶりのパパのライブ。こんな卒業式の日に見られるなんて、幸せだな、と思った。
「なんかあるかな?」
と言ってレナは笑った。
「なんかって?」
アハハ、とレナは笑って、何でもないよと言って立ち上がった。
「さあ、行こう。」
レナの差し出した手をすばるは取った。
新しい日々、幸せが、これから満ちてる。
そんな希望が溢れていた。
空想都市一番街
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