卒業の日 ①

その日はよく晴れた。

絶好の卒業式日和だ。

すばるとシュリは一緒に大学に向かった。友達のレナは先に着いていた。

「おはよう。ついに来たね。」

レナはすばるの顔を手で包んで微笑んだ。

「うふふ。もう卒業なんだね、私たち」

なんだか信じられないくらい、短かったような、でもいろんなことがあったような。

それぞれの道を歩いていくことへの希望と、別れの寂しさ。

今日大学にいる卒業生のみんながそれを感じていた。

「さぁ、着替えに行こうぜ。学長のスピーチもあるし。」

シュリが声をかける。

三人は更衣室で黒い制服を身につけて帽子を被った。

今までの努力が、この姿に現れている。鏡に映る姿を見てすばるは思った。

卒業式は滞りなく進められた。

ひな壇に並んだ卒業生たちは学長のスピーチに涙したり勇気づけられたり。

これから社会に出ていくのだ。
みんなその希望を胸に、卒業式を終えた。


式にはタクヤもルイも来ていた。

「卒業おめでとう。立派な姿だね。4年間、頑張ったな」

タクヤは本当に嬉しそうにすばるに言った。あの小さかった少女が、こんなに大きく立派になった。

「ありがとうパパ。私パパのおかげで大人になれたよ。」

すばるも深く感謝していた。この人が見捨てないで育ててくれたおかげで、大人になれた。


「シュリ」

シュリは声に振り返るとルイが近づいてきていた。

「ルイ!見て、俺、大人になっただろ?」

嬉しそうに姿を見せるシュリ。

「うん。すごく立派だよ。あの小さかった君がこんなに大きくなって…お母さんに見せてあげたい。きっと今頃見てるかな。優里ちゃん。」

ルイはいつものように優しく言った。
久しぶりにシュリの母の名を口にして。

「母さん、喜んでくれてるかな」

「もちろん!優里ちゃんの大事な息子なんだから。誰より喜んでるよ。」

シュリは嬉しかった。新しい母のことも好きだったが、ルイはいつも亡くなったシュリの母も大切にしてくれた。新しい母でさえ、シュリの母を心から大切にしてくれた。

俺は家族に恵まれた。

そう思った。そしていつも愛してる、と亡き母に心の中で思うのだった。
「レナ、卒業しても、友達でいてね。体に気をつけて頑張ってね」

すばるは病院勤務が決まっていたし、レナは兼ねてから活動していた音楽活動が軌道に乗り、メジャーデビューすることになっていた。

「もちろんだよ。すばるはあたしの親友だから。あんたこそ、幸せになりなよ」

すばるは母を赤らめて、うん、とうなづいた。

「今日のAZEMICHIの卒業式ライブ、あたしも招待されてるから。一緒に行こうよ。シュリも」

うん、と答えて、すばるは空を見上げた。

久しぶりのパパのライブ。こんな卒業式の日に見られるなんて、幸せだな、と思った。

「なんかあるかな?」

と言ってレナは笑った。

「なんかって?」

アハハ、とレナは笑って、何でもないよと言って立ち上がった。

「さあ、行こう。」

レナの差し出した手をすばるは取った。

新しい日々、幸せが、これから満ちてる。

そんな希望が溢れていた。



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