拓也とそんな朝を過ごした日。
響は早番のバイトだった。(そもそも響は早番しか入らないのだけど)
悠斗が遅番だったのだけど急遽出られなくなり、レナが遅番を代わっていた。
レナは今日拓也の家に泊まる、と響に話しした。
「響はソファベッドになっちゃうけどごめんね。そういえば響が来てから拓也さんの家に行くの初めてだね。私適当にやるから気にしないでいいから。」
レナはいつものように愛想なくそう言った。
響はレナと交代して、真っ直ぐに拓也の家に帰った。拓也はちょうど出かけるところで、帰りは11時くらいになると言った。
「今日はレナが遅番?…そうか。武内さんのことはレナも協力的だったよな。話、レナにも聞かれてもいいか?お前が嫌なら明日話すけど」
「いや、構わないです。今夜話ししてください。」
拓也は返事の代わりに、とても優しい顔をして微笑んだ。
響はこんな顔をした拓也を見るのは初めてだと思う。
「じゃあな」
そういうと、玄関を出て行った。
いったいどんな話をするのだろう。
響は胸がドキドキして、落ち着かない気持ちでベッドに寝転んだ。
夜11時ごろ、拓也はレナと同じくらいに帰って来て、
2人とも順番にシャワーを浴びてリビングの席に着いた。
「響にこれから大事な話するから。レナも一緒に聞いてくれ。」
拓也はいつもより少し鋭い目をしていた。
響は緊張して席に座り、レナは真っ直ぐに拓也を見ている。
「武内正臣、お前のオヤジだよな?お前は、オヤジがなんで死んだのか、知ってるのか?」
「詳しいことは知りませんけど…僕が物心つく前に事故で亡くなったって聞いてます」
それが一体なんの関係があるのか?突拍子も無い発言に響は驚いていた。
「お前のオヤジはあのトンネルのすぐ近くの線路で飛び込み自殺してる」
「え?」
響は目を大きく見開いて拓也を見た。
父が自殺?
無意識に膝の上に乗せたこぶしに力が入っていた。響は微かに震えていた。
「響」
レナがその手にそっと手を重ねて握った。温かくて柔らかい手に触れられて、響は少しだけ冷静を取り戻した。
「武内さんはその現場にいたんだ。
あの人はギターでぶん殴られて右肩から腕にかけてかなりひどい怪我を負っていた。
見た感じ、もう右腕は使い物にならなそうだったとよ。」
空想都市一番街
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