「俺な、弟を亡くしてんだ。」
ぽつり、と拓也が言った。
「同じバンドやっててさ。俺がドラムであいつはピアノボーカル。
俺が言うのもなんだけど、あいつは天才だった。俺の中であいつを越えるボーカリストは今でもいないよ。
あいつはいつか、でかい箱でライブするのが夢だったんだ。ステージからの景色を見たいって。」
レナは少し前のめりになって拓也を見つめて聞いていた。響も拓也の告白に言葉も出なかった。
「でもあいつ、死んじまった。
ダム湖にバイクで突っ込んで。バイクは上がったのに、あいつは見つからなかった。どんなに探しても。
生きてる形跡もないんだ。俺と親父はずっと信じてたけど、一年たつ頃にはもう死んだって思うことにした。」
響もレナも、固唾を飲んで話を聞いていた。
「警察関係の知り合いがいるのはその時親身になってくれたデカのおっさんで、昇進してこっちにいるから話聞いたんだ。信用できるぜ。
俺もバカだからさ、響、お前見てると涼太のこと思い出すんだ。
俺はお前の願いを叶えてやりたいと思った。それで今までやってきたけど、とりあえず俺に出来るのはここまでだ。あとはお前決めるんだ。」
響はうなづいた。
「拓也さん、僕行ってみます。あの場所に。拓也さんが教えてくれたこと、無駄にしないです。」
響にはそう言うのが精一杯だった。
隣でレナは目に涙をいっぱいにためてうつむいていた。
空想都市一番街
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