着替えはこれくらいでいいだろう。
携帯の充電器、アイパッド、イヤホン、それに文庫本を数冊。
僕はそれらを小ぶりな旅行カバンに詰め込み、最後に姿見で自分の姿を見た。
以前と比べればずんぐりと太って、今やくびれも顎も行方不明だ。
何かでつまづいて転がり落ちるように全てがうまくいかなくなった僕は、心地よくて誇らしかった体もあっという間に醜く変わってしまった。今や僕の姿は諦めの塊のように見えた。
この姿が、帰ってきたらどんなふうに見えるようになるんだろう。
変わることが出来るだろうか。
もやもやした視界が鬱陶しい。僕はさっき自分で傷つけた腕の傷を見る。
触るとじんわり痛い。大丈夫だ、僕はここにいる。
でもこんなことしなくても、このモヤがかかった世界が晴れて見えるように、きっとなれるはずなんだ。
僕はカッターナイフを手にした、荷物に入れようか迷った。
しばらく迷ってから、それをテーブルの上に置いた。
考えないように、考えないように。
僕は頭の中でゆっくり10数えて深呼吸をすると、カバンを持って玄関を開けた。
外の世界の光は眩しすぎて、先が見えない。
でも、眩しいほどにの光にも、きっとそのうち目が慣れる。
僕は目を細めながら、駅へと歩き出した。
空想都市一番街
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