夜を越える

僕は自分の寝台に戻って、去りゆく景色を見ていた。


全部覚えておきたい。けれどそうするには、僕の脳みそは容量が足りなさすぎる。


忘れてしまってもいいのだ。きっと、大切なことなら、記憶の片隅で生き続ける。


他の寝台からひそひそと話し声が聞こえてくる。それは楽しそうだったり、悲しそうだったり、色々だ。そう、僕がこうしている間にもどこかの知らない誰かは、楽しんだり悲しんだり怯えたりしている。


僕は目を閉じた。


みんなそれぞれ自分のことが1番大切で、精一杯だ。

みんなの夢が叶いますように。みんながそれぞれ幸せになりますように。


ずいぶん時間が経ったようで、もうすぐ日が昇る。ひとまず僕は一つの夜を越えた。


明日も明後日も夜は来る。

僕の大切な仲間達がいるあの美しい街に着くまで、まだ時間がかかりそうだ。


焦ってもしょうがない。


僕はそのまま少し眠った。

夢にはソラとコウタが出てきた。なぜか2人は僕を応援してくれていた。

オカベさんも出てきた。

「すばるちゃん、大丈夫よ。あなたは大丈夫。」

オカベさんの言葉が心に染み渡ってくる。


僕は大丈夫なのだ。


旅は続いていく。

0コメント

  • 1000 / 1000

空想都市一番街

このサイトは管理人「すばる」の空想の世界です。 一次創作のBL、男女のお話、イラスト、漫画などを投稿しています。 どうぞゆっくりしていってくださいな。