エッセイ「灰色の夜」

「青い目のステラ」を聴きながら狭い浴槽に半分だけ貼った湯に浸かる。

頭には快感と幸福と、無と不幸せと、ゆるい希死念慮が膜のように張り付いている。鬱陶しいようで、どうでもいいようで。

目を閉じる。このまま死んでも別にいいなぁ、と思ったりもする。それは結構本気でもあり、戯言でもあり。

恵まれているのに孤独な気持ちになるのは、あまり人と本気で共感出来たことがないからだな、とふと気づく。

難しいことを考えるのは損だな、と、亡くなった同僚のことを思い出すと私は思うのだった。
あの人は共感だとか云々いちいち考えてなんかなかった。ただ、「仲のいい友達」がいて、それで心地が良さそうだった。

私もそう出来たら、きっともっと幸福なんだろうと思う。

共感や、興味関心を持たれたい、と思うのは、それが足りなかったからだ。

今までの人生で満たしたことのない部分なのだ。

だからそんなことばっかり考えてしまうのだろう。

私は、小さな声で風呂で歌った。
部屋にいる相方には筒抜けだろう。

でもなんでもいいや。

求めなければ全てがあるのだ。
そしてそれがたまらなく悲しく虚しいのだった。

おかあさん

ふと思った。

私を見て。


お母さんのようにお姉さんのように、私の話を聞いてくれた元同僚が逝ってもう一年以上たつ。

私もいつか行くのだ。
怖がりだったあの人が辿った道を。

それまで、少しくらいは、求めてもいいよね。

くだらない散文を書き散らしながら夜は過ぎる。

「青い目のステラ」が優しく流れる。




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