悠斗がしばらくバンドのアルバム制作や地方遠征で休んでいる間、
スタジオギガヘルツは拓也とレナと、拓也が呼んだヘルプの他数名で回していた。
レナは悠斗の分も遅番が増えたので、今日は久しぶりに拓也の家に泊まりに行くことにした。
遅番が終わった後だと終電がギリギリなのだ。
『俺は仕事で遅くなるから、ちゃんと鍵しめろよ。窓も。物騒だからな。冷蔵庫にアップルパイ入ってるから食べな』
電話したら拓也がそう答えた。
レナは一人でマンションに向かい、ポストから鍵を出して中に入った。
最近遅番は悠斗が入っていたから、レナには久しぶりの拓也の家だ。
「相変わらず散らかってるなあ拓也さんの部屋。これいつ着たTシャツ?男くさっ」
汚れものを洗濯機に放り込んだ。
拓也に言われた通り、アップルパイを出して食べると、甘さ控えめジャムが入っていてすごく美味しい。
「これ拓也さんが作ったんだな。冷凍パイシート使ってるし。美味しい。」
レナは拓也の料理が好きだった。
この夏に響という少年と拓也の家で過ごした時も一緒に拓也の手料理を食べた。
そうそう、その時、響には拓也さんのこと好きって教えちゃったんだよね。
あれからもよく拓也の家には来てたけど、特に進展もなし。
過去には拓也が寝てる布団に潜り込んで一緒に寝たこともあったのに、手も出してくれなかった。
レナは諦めるしかないかなぁと漠然と思っていた。全然相手にされてないし。
その時玄関のドアの鍵を開ける音がした。
「ただいまー。レナ、飯食べたか?」
拓也のただいま、の声にレナは胸がキュウっとなった。
ただいまだって。好きな人のそんな言葉聞けるの、幸せだよね。
レナは拓也を出迎えた。
「おかえりなさい。ご飯食べたよ。アップルパイも食べた。すごい美味しかったよ」
無自覚にレナは拓也には笑顔を見せる。
「おう、そっかよかった。」
「ねぇ、あれって拓也さんの手作りでしょ?中のリンゴジャムも?」
二人してリビングに向かいながらレナが言った。
「そうだよ。うまいだろ、りんごいっぱいあったからこの前作ったんだよ。…なにその顔、前にも言われたけど、やっぱ俺がジャム作るのって意外?」
「うん、だって拓也さん見た目はスイーツとか作らなそうじゃん。」
「やっぱそっかぁ、ギャップ萌えだろ?」
レナは笑ったけど、何かが引っかかった。
前にも?
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