今年のクリスマスは誰か友達と過ごそうかと思っていたけれど、
なんだかうまいことみんな彼氏ができたり帰省したり。
シュリもルイさんのクリスマスコンサートに出ると言って遠い地方に出かけて行ったし、
すばるは結局タクヤと過ごすために連絡を入れることにした。
正直会うのは嫌なような気もした。
好きなことが顔に出てしまうかもしれない。嫌われちゃうかも。
でも、会いたかった。
連絡を入れるとタクヤは快くいいよと返事をくれた。
一緒に過ごす相手はいなかったようだ。
当日。シェアハウスまで迎えにきてくれたタクヤの車に乗って、家に帰った。
一応プレゼントは持ってきた。
でも、質素に一緒にご飯食べるだけだろうなと思っていた。
しかし、家に着いてリビングに入ると、すばるは目を丸くした。
部屋が可愛く飾り付けられている。
それに、テーブルにはたくさんのご馳走…
「パパ、なにこれ、すごい!かわいい!!美味しそう!!」
大人しくしていようと思ったのにテンションが上がってしまうすばる。
「だってクリスマスじゃん。今までもやってたでしょ?」
「そ、それはそうだけど」
親子として距離をとって大人しくしているのかと思ってたのに。
「それに、プレゼントもあるよ」
「あっ、私も」
なんだ、普通だな。
すばるは心がほぐれてきた。
タクヤはいつも通りに接してくれる。
「ハニーシャンプーのセットだ!ぬいぐるみもかわいい」
タクヤには映画のフィギュアとクリスマスカードを送った。
好きなキャラクターなのでとても喜んでくれた。
それから、2人はタクヤの作った料理を食べ、お茶を飲みながらゆっくり話をした。
「パパありがとう。すごく楽しく過ごせたよ」
「俺も楽しかったよ。お前の元気そうな顔が見れてよかった」
いつも通りのタクヤだ。
父親として、すばるを慈しんでくれるタクヤだ。
すばるも、父を慕う娘としていようと努めた。
「私もパパに会えて嬉しかった。ちゃんと娘としてだよ。」
心と違うことを言うのは正直辛かった。それでも、こうしてタクヤのそばにいられるのは嬉しい。
「…そろそろ帰るね。パパ、寒いから風邪ひかないようにね。」
「ああ。すばるもな。新年もよかったら帰っておいで。」
すばるはうん!と笑顔を見せながらも、なんだか泣きたくなってしまって潤んだ目でタクヤを見つめてしまった。
すばるははっとして無意識に一歩下がると、
「また新年ね!」
と言って今度は上手に笑った。
つもりだった。
「…ハハ、泣くなって。またすぐ会えるから。」
上手くやったつもりなのに。
なんだか勝手に泣いてしまった。
いけない、歯止め効かせなければ。パパを困らせたくない。
「えへへ、ごめんなさい、久しぶりにパパに会ったからかなぁ。子供みたいだよね私。ごめんなさい。もう平気だか」
と言い終わるところでタクヤはすばるの頭をポンポンと撫でた。
久しぶりの感覚だ。
大きなタクヤの手がすばるの頭を優しく撫でる。
「…大丈夫。新年も待ってるよ。」
タクヤは言葉をとても選んでいた。自分のせいで泣いているのはわかっていた。
でも、軽はずみな言葉を言うのは優しさじゃない。すばるのために、軽々しいことは言いたくなかった。
「うん!パパのお雑煮食べたい!」
そしてまたタクヤの車でシェアハウスまで送ってもらった。
帰り際に握手をしてもらった。
すばるはその感覚をずっと忘れないように祈りながら、その日は1人で眠った。
メリークリスマス。
あなたに幸せが訪れますように。
空想都市一番街
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