朝ごはんの後、タクヤは
「今日は仕事の後、パパの友達を連れてくるよ」とすばるに言って、出かけていった。
タクヤは音楽学校の講師の他に、映画やCM音楽の制作や、自分のバンドでの活動をしている。
今日の仕事は、仕事場で友達とCM音楽の制作をすることだとすばるは聞いていた。その友達とは、一緒にやってるバンド仲間でもあるそうだ。
すばるは、家のピアノでタクヤが弾き語りをしてくれることはあったけど、タクヤのバンドを見たことがない。
どんな人が来るんだろう、、とドキドキしながら待っていた。
夕方。
インターホンが鳴った。
玄関先にタクヤと、友達のお兄さんが立っている姿が映る。
『ただいますばる。友達連れてきたよ』
パパの優しい声に「うん」と答えてすばるはドアロックを外す。
「おじゃましま〜す!」
とタクヤと一緒に入ってきたのは、長髪で細身、すらりと背の高い、男の人だった。
若く見えるけど、パパより結構歳上かも。
と、ママの恋人を散々見てきたすばるは一瞬でその人を値踏みした。
「俺の友達の泪(るい)だよ。」
タクヤが紹介して、泪が挨拶をしようとした時、すばるは咄嗟にタクヤの後ろに隠れてしまった。
「あれ?すばるどうしたの?人見知り全然しないのに」
タクヤは驚いて目を丸くしている。
すると泪が言った。
「あ、そうかもしかして、サングラス、嫌だったかな。目を見せない人ってどんな人か分からないもんね。
君、気持ちを読むのが上手そうだから、困ったでしょう。ごめんね。」
そう言ってサングラスを取った。
「はい。これが僕の目。生まれつき視覚障害があるからいつもサングラスしてるんだよ。怖いかい?」
すばるはタクヤの後ろから出てきて、目を見せてくれた泪に近寄った。
泪の目はブルーとグレーが混ざったような、不思議な色だった。
サングラスを取った顔はとても穏やかで優しげだ。
「すごく綺麗な目。深い空の色みたい。全然怖くないよ。見せてくれてありがとう。私が目を見てるって分かったの?」
泪はふふふ、と笑った。
「うん。なんとなく分かったよ。僕は泪(なみだ)と書いて「るい」。君のパパと一緒に音楽作りしたりバンド活動してる」
泪がしゃがんですばると視線を合わせ、そっと右手を差し出した。
「あ、、私は、すばる。よろしくね、泪さん」
すばるは小さな手を泪の手に重ねて握った。
それから泪にピアノを弾いてもらって、一緒に歌った。
泪はとても穏やかで優しくて、泪の弾くピアノもとても優しかった。
パパも優しいけど、パパの弾くピアノとも違う。
同じ楽器なのに、弾く人によってこんなに違う。すばるはピアノが前よりどんどん好きになった。
「ねえいつかパパと泪さんのコンサートに行きたい!」
「おう、すばるは来たことなかったもんな。じゃあ次にやるときは見においで」
すばるはやったー!と言いながらソファに座るタクヤに抱きついた。
タクヤは微笑んですばるの頭をぽんぽんと撫でた。
「すばるちゃんはご招待のお客様だから、招待状送るね」
泪の言葉にすばるは嬉しそうにうん!と答えた。
それからみんなでパパの作った美味しいご飯を食べた。
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