僕は、この世界を一人で旅して回っている。一人が好きだ。でも、時々僕を気にかけて、暖かい部屋で寝かせてくれる人もいる。
そんな人には何泊かお世話になることもあるけど、やっぱり僕は一人になりたくなってしまうのだ。
僕は今日、愛美さんとルイさんの家に呼ばれて泊まらせてもらっていた。
2人は僕のことを何かと気にかけてくれる。
たまたま森の中でキャンプをしていたら、ハイキングに来た2人に会ったんだ。その時3人で話をしてから、僕をこうして時々招いてくれるんだ。
僕はこれといって特徴もないし、正直言って親密に交際したいと思えるような面白いところもないと思う。ただのつまらない人間だ。
だから2人が僕を気にかけてくれることがとても不思議だ。
「本当にもう行くの?まだここにいてもいいのよ?」
愛美さんが僕の手を取って言った。
「はい、ごめんなさい。ご飯も美味しかったし、とても楽しかったです」
僕は愛美さんの手の上に自分の手を重ねた。
「でも、、まだ外は寒いわ。もう少しいてもいいんじゃない?」
僕は首を横に振った。そして目線を落とした。目を合わせたくなかった。
「いいよ、行きたいんだろう?君の気持ちを僕らは無理に変えられない。でもね、遠慮は絶対にしなくていいから、またいつでもおいで。僕たちはいつでも待ってるから」
ルイさんは優しく言った。
ものすごく優しい声だった。
耳を塞ぎたいくらいに。
「ありがとう。また、会いましょう。さようなら」
僕はできるだけ明るく言って、家を後にした。
「待ってるわよ!」
後ろで愛美さんの声が響いた。
僕は振り返って手を振って応えた。
次はどこへ行こう。ぼんやりと考えていると、目の前の席に青い髪の人が座ってきて僕をじっと見つめてきた。
僕は最初は無視していたのだけど、あんまりじっと見つめてくるから居心地が悪くて席を立った。
外の公園のベンチでくつろいでいたら、またさっきの青い人が近くにいて僕の方を見ていた。さすがに僕も声をかけた。
「あの、さっきからこっち見てるみたいだけど、何か用?」
「うはは、やっぱり!!私のこと分かるんだ。そんな気がしたんだよね。ねぇ私どんな姿に見える?」
「は?どんなって、、髪が青くて水色のコート着て黄色いマフラーしてるけど」
変な人だな、、と思って僕は警戒気味に答えた。
「うはー!そうなんだ!私そんな感じなんだ。面白いなぁ」
何かテンションが上がって1人で盛り上がっているその人を置いて、僕はそっと移動した。
「ねぇ、私たちは似てるみたい。そう思わない?」
青い人は一方的にそう言って僕が移動したバザーまで付いてきた。
「一緒に火を囲むと仲良くなれるよ。飲み物飲みながら座ろうよ」
あまりにもナチュラルに強引なので僕は閉口したけど、しつこいのでフルーツジュースを手に2人で焚き火の前に座った。
「君の名前は、、?あ、やっぱいいや。君は何をしてるの?」
青い人が聞いた。
「僕は、、1人が好きだから、1人で色んなところに行ってるよ。あなたの名前は?どうして僕を見てきたの?」
「ふむ。1人が好きなんだ。私の名前は、、そうだな、青いから『アオ』がいいな。アオって呼んでよ。君、すごく面白くてね。急にあの場所に現れるんだもん。だから面白くてずっと見てた」
『アオ』の言ってることはちっとも分からない。僕は首をかしげた。
「まあいいよ。よかったら友達になってくれないかな。私まだこの世界に友達がいないんだ」
「この世界にいない、なんて大袈裟だな。それとも変な人だからいないの?、、まあいっか。変わり者なのは僕も同じだし。よろしくね、アオ」
僕らは握手を交わした。
火を囲むと仲良くなれるっていうのは本当かも、思った。
空想都市一番街
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