一年前僕らは「またね」って言って別れたんだ。
また会える日は来なかった。少なくともこの世界では。
またね
あの時確かにそう言ったあなたは今どこにいるんだろう。
何を思っているのだろう。
同じ目で同じ言葉で同じものを見ていたあなたは
ここに来てくれないかな
最後にお話がしたい
そんなことを考えながら僕がうとうとしていると、いつのまにか焚き火の後ろに人影があった。
「もしかして、あなたは…」
僕は息を呑んだ。でも人影はただ火の向こうで微笑んでいる様にゆらゆらしているだけだった。
「僕はあなたがとても大好きだったよ。すごく大好きだったよ。あなたといて楽しかったよ。だから…ありがとう」
火のはぜる音がした。
すると確かにそこにいたはずの影はもう消えていた。
代わりに、見慣れた友達がそこにいた。
「やあ。お友達にお別れは言えた?」
「アオか。お前はいつも急に現れるんだな。」
僕は泣きそうだったのをこらえて普通の顔を装った。
「私は急に現れるんじゃなくて、いつも全ての場所にいるんだよ。」
「ふうん。なんかよく分かんないけど。
それよりさ、アオはなんでも知ってるんだろ。死んだらどうなるの?」
僕が尋ねると、アオは「は?」という顔で首をかしげた。
「そんなことも知らないでお別れしてたの?」
「当たり前だろ。普通の人間は死んだらどうなるかなんて分かんないんだよ。」
そういうとアオは納得した様にうなづいた。
「そうだった。私はすぐ人間の目線を忘れるなぁ。ていうか君は普通の人間ではないだろ…まあ、いいや。
とにかく、それを知らないなら、人間には説明しても分かんないな。」
「え!そんなこと言わないで教えてよ。わかる範囲でいいから!」
アオはめんどくさそうに頭をかいた。
「しょうがないな。死ぬっていうのはつまりここにいないってことさ。体はね。
でも、同時にここにあるのさ。私がいつでも世界中にあるようにね。君はてっきり、友達の体にお別れしてたのかと思ったら…全部いなくなるとでも思ってたんでしょ。」
「全部なくならないの?」
「うん。この世界があるくらい明白かつ不確定だけど。体がなくなっても、いつも全てがここにある。明白かつ不確定に」
「よく分からないな…」
「でしょうね。ま、心配無いってことさ。それじゃまたね」
アオは背伸びをすると手を振って消えていった
アオが心配無いっていうなら、きっと大丈夫なのだろう。
アオは神様なのか悪魔なのか、どちらでも無い何かなのか分からないけど。
あの人は大丈夫なのだ。
そして今もきっと僕はあの人と共に在る。
僕たちは大丈夫なのだ。
何だかそう思ったら、さっきよりずっと近くにあの人を感じた。
いつもそこにいるんだね。
僕は空を見上げながら火のそばで眠った。
空想都市一番街
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