ジェノサイダー

メインシティから遠く離れたこの土地に、まるで砦のようにそびえた無法地帯はあった。

狭い土地の中に違法建築で上へ上へと伸びた住居。酒場から闇医者、闇市場、ここにはなんでも揃っていた。犯罪の巣窟であり、貧しいもののユートピア。

ここは「第九砦」。

ユノはここで生まれ育ち、ここの中に存在するマフィアの一つに所属していた。

ユノの組織の名は「闇猫」。
捨て子だったユノは(おそらくどこかの売春婦が産み捨てたのだろうと思われる)、まだ目の開かない赤子のうちに拾われ、闇猫のトップの女「タオファ」通称「ママ」が運営する孤児院で育てられたのだ。

子どもの頃から闇社会の生き方を叩き込まれた。武器の使い方や格闘技も。

人並みよりは強くなったが、それでもママに言わせれば、「あんたは戦うには体が恵まれてない」そうだ。
頭の方が良かったので、何かと戦略を練ったりしのぎのやり方を考えたり、参謀的に扱われた。パソコンやハッキングも得意で組織に重宝されたし、ユノにとってもそっちの方が得意だった。

ママはユノと同様にたくさんの捨て子を孤児院で育てて自分の部下を増やしていた。古い幹部たちもいたが、数年前に先代のボスが死んでからは人の出入りもあり、構成員は若い者が多い。

そんなある日、ママが小さな女の子を連れてきた。まだ5つにもならないくらいだろうか。
明るい髪色に青い瞳。白い肌。でもどこかエキゾチックな顔立ち。少女は混血のようだった。

「その子は?」

ママの執務室に呼ばれて入るとユノは真っ先に聞いた。

「この子は特別な子でね。まだ名前は無い。…気になるかい?」

ユノはママの言ってる意味がよくわからない。

「どういう意味だよ?」

ママはふふふと笑いながらその子を抱き上げて撫でている。

「この子の名付けには特別な儀式が必要なんだ。本名は誰にも知られてはいけない。ユノ、あんたにはこの子の名付け親になってもらってもいいと思ってるんだよ。あんたは頭がいい。闇猫には今後確かなブレーンが必要だからね」

まだ16のユノにそんな話をする。ユノは複雑な気持ちになる。

「ババア…じゃねーや、ママ、何言ってんの。まだオレにそんな話早えよ」

「こら、口に気をつけないと打つよ。
何事も早いうちに手を打つものが勝つのさ。とりあえずこの子の呼び名を決めようか。そうだねえ、あんたのことは「ヨウメイ」って呼ぶよ。いいね」

ママの膝の上で少女はうなづく。

「で、その子どうすんの?」

「第3区で徹底的に格闘技を教え込む。まあ、この子は教えなくてももう体が知っているんだけどね。覚醒しなくても使える子にしなきゃならないから。あんたも聞いたことくらいあるだろ。この子はジェノサイダー。完璧にトランスヒューマニズムされた「兵器」なのさ」

え?と声を漏らしてユノは少女をみつめた。

ジェノサイダーだって?

話には聞いたことがある。戦うために作られた、改造人間。1人で一国の軍隊ほどの戦闘力を持つと言われる。
都市伝説だと思っていた存在がこの少女だというのか。

「ユノ、あんたにこの子をあげるよ。将来闇猫を背負って行ってちょうだい。」

唐突にママが言った。

「何言ってんだよ。No.2はディアナだろ」

「ディアナはあくまでも看板だ。実質はあんたが握るのさ。」

ディアナとはママの娘で、足が不自由で車椅子の女。ユノの7歳上の姉のような存在だ。

「そ、そんなこと急に言われてもな…」

「まあいいよ、まだピンとこなくても。あんたが大人になったら、この子に名前をつける方法を教える。ジェノサイダーは本名をつけた人にだけ仕える。力を解放出来るのも名付けのだけ。大人になるのを楽しみにしてな。」

ユノは苦い顔をしたままママを見つめる。

「ヨウメイ、ユノ兄さんだよ。よく覚えておきな。」

ヨウメイは青い目でじっとユノを見つめる。
それが出会いだった。



「浮かない顔してるわね。ママにあの子に会わせられた?」

ベッドに腰掛けてタバコを吸うユノにディアナは笑いかける。ユノは苦い顔をしてうなづく。

「正直信じられねえよ、あの子が兵器だなんて」

タバコを乱暴に灰皿に揉み消すと、ユノは振り返ってディアナの裸の柔らかい胸に顔を埋める。

「にわかには信じられないわよね。よしよし」

ディアナはまだ幼さの残るユノの顔を優しく撫でる。

「俺、次のボスだとか兵器の女の子だとか言われても、正直ピンとこねぇ…」

ユノはディアナの胸を少し乱暴に掴みながら乳首に吸い付いた。

「もう少し優しくして…あっ…」

さっきしたばかりなのにまた熱を帯びて来たユノはそのままディアナを抱いた。

まだ16の少年らしくユノは貪欲にディアナを求めた。

2人がこんな関係になったのはなんとなく流れからだった。ユノにしたら姉のようなディアナに甘えさせてもらっているという感じ。
いくら頭がいいとはいえ、誰かを愛することを理解するにはまだ少年すぎた。
そんなユノをディアナは全て許しているのだった。

ユノはモヤモヤした思考を振り払うように、ディアナの中に全て放った。


それから数年。ママは時々ユノとヨウメイを会わせた。2人は少しづつ兄妹のように交流をしていったのだった。


そんなある日、突然ママが死んだ。

スラムのメインストリートでストリートチルドレンを保護していたところを敵対マフィアに銃撃されたのだ。

闇猫に判断が迫られていた。

ママはユノに闇猫を譲りたがっていたが、トップを狙う内部勢力はたくさんある。素直にユノに譲られないことは明白だった。

そのうち内部での抗争が起きるだろう。ユノは暗殺の恐れがあった。
闇猫をどうするか。

育ててもらったママには恩があった。他にもたくさんの恩人もいた。
でも、自分はこのままマフィアの組織を統べりたい訳では無い。

外に出たい。

18歳になる今まで見つめたことがなかった本当の自分の気持ちを悟ったユノは、抗争の混乱の中第九砦を抜け出す決心をした。自分とヨウメイと、そして、ディアナと。

「ユノ、これを」

ユノが自分の気持ちをディアナに話しをすると、ディアナは手紙をユノに差し出してきた。

「封は開けられていない。ママからあなたへ当てられた手紙だよ。何かあったらあなたへ渡すように言われていたの」

ロウでしっかり封じられた封筒を開けると、手紙には、ヨウメイの名付けの儀式について書かれていた。
この兵器を手に生きろと。

ユノは毛穴が逆立つのを感じた。

ヨウメイ、あの子どもが、誰かの思惑のために兵器として使われる。

そんなことが、許されていいのか。

「ディアナ、俺はヨウメイを連れてここを出る。お前も行こう。いくらママの娘でも、足が悪いお前は次のトップは無理だ。殺される」

ユノがディアナに迫る。
ディアナは微笑んで首を振った。

「私はここにずっといるって決めてるのよ。ちゃんとママにも以前から話してあるの。だから私のことは心配しないで。その手紙とヨウメイを連れて逃げなさい。それはきっと正しいわ」

ユノは胸が締め付けられる気持ちになった。ママと共にいつもユノを育ててくれた姉のような大事なディアナを置いては行きたくなかった。

「いやだ。ディアナ、一緒に…」

「行きなさい。これは運命なの。行くのよ」

ディアナの目が不思議な光を放った。
それはなんだか、小さな犬が強がって唸っているように見えた。
一生懸命強がって、ユノを突き放そうとしている。

「行きなさい…」

今にも溢れそうなほど目に涙を溜めてディアナはキッとユノを睨む。相反する心。ジレンマ。それでも毅然とした態度を示そうとするディアナは健気で、ちゃんとボスの血を引いているようにユノには映った。

そしてその時、ユノには何だか分かった。分かってしまった。

ディアナはずっと自分を男として愛してくれていたのだと。

「早く。ヨウメイが危ないわ。私はまだここでやることがある。覚悟はできてるのよ。あなたは外で、必ず生き延びなさい。生きていたらいつか、会えるかもしれないか」

ユノはディアナが言葉を終える前に抱きしめた。出会ってから今までの感謝を、愛情を、こんなことでは伝えきれないけれど。

ディアナは目を閉じて抱きしめ返すと、2人は最後のキスをした。
一瞬の時間が永遠のように感じた。きっとこの瞬間のことは一生忘れないだろうと2人は思った。

「ありがとう。俺、ディアナが好きだったよ。これからも好きだ。生き延びて、いつか会おう」

「…うん。またね。ありがとう」

ユノは気持ちを振り払ってディアナの部屋を後にした。
ディアナが覚悟を貫くのだから、自分も迷ってはいられない。

まずは第3区へ。


第3区には格闘技を教え込む施設があった。ユノも叩き込まれていた頃はここの宿舎で寝起きをしていた。
内部の作りは知り尽くしている。

「道場」と呼ばれる場所ではまだママの訃報も届いていないようで、この時間も訓練が行われていた。

ユノはそっと中を伺った。

何人かの者たちに紛れて、ヨウメイの姿を見つける。
久しぶりに会った、10歳くらいに成長した彼女は年よりも大人びて見えた。

ユノはそっと近づいて声をかけた。

「ヨウメイ、俺だ」

背後からの声に驚いてヨウメイは振り返る。

「ユノ兄さん?急にどうしたんですか?」

「抗争が起きてババァ…ママが死んだ。ここにいたら危ない。オレと一緒に逃げよう。闇猫を出よう」

そう言って手を差し出してくるユノをヨウメイは目を丸くして見つめる。
幼い時から何度も会っていたユノに、ヨウメイは淡い憧れを抱いていた。

頭脳明晰な闇猫の次期トップ。
自分はこの人に一生使えるのだと思っていた。

それが今、一緒に逃げようと手を差し出してくる。

闇猫にいる以外の選択肢なんかないと思っていた自分に。

「早く!大丈夫だから。オレと一緒に行こう」

まっすぐなユノの目を見つめ、ヨウメイは乾いた喉を鳴らす。


次の瞬間、ヨウメイはユノの手を取った。

出会った頃よりずっと大きくなったユノの手はヨウメイの手を強く握り返し、走り出した。


「ユノ兄さん、どこへ行くつもりなの?!」

走りながらヨウメイが聞く。

「トレインに乗る。とにかくスラムを出て、街へ行く。行き先はオレに任せればいい。必ず安全な場所に連れて行く」

ユノは振り返りもせずにそう答える。


2人は入り組んで迷路のようになった第九砦の中を駆け抜けた。
中を知り尽くしたユノは最短距離で駅まで急ぐ。

ここで捕まるわけにはいかない。
ここで捕まったら、ヨウメイは闇猫で死ぬまで兵器として使われるだけだ。


ようやく駅構内に着く。

ホームに重々しい黒い列車がスチームを吐き出しながら入り込んできた。

ユノは足がつかないように現金で一等寝台の金を払うと部屋へ入った。

「ふぅ。とりあえず一安心だろう。明日の朝には着くから、ゆっくり休んでおけよ」

窓のカーテンを引いてから革張りのソファにどさっと身を預けてユノが言った。ヨウメイは目を丸くして室内を見渡している。

「…すごい。いつかママが連れてってくれたホテルみたい」

「そうか。ママはお前を可愛がってたな」

ヨウメイの顔が曇る。

「ユノ兄さんのこともいつも話してました。他の人のこと話す時とは違う顔して。ママのお気に入りだったんですね」

この世界では人が急に死ぬことは珍しいことではない。ママもマフィアのボスだ。いつ狙われて死んでもおかしくはなかった。それが分かっているから、2人は黙って悲しみを噛み締めた。

「…ディアナさんは?」

ヨウメイは拳をギュッと握って問いかけてくる。

「ディアナさんは、無事なんですか?」

「あの人は闇猫に残ることを選んだ。まだやることがあるんだと。自分の役割を果たすつもりなんだ。俺なんかよりずっと、覚悟が固かった」

ユノはため息を吐いて髪かき上げた。

「ディアナの周りにはちゃんと守ってくれるボディガードがいる。よほどのことが起きない限りきっと大丈夫だ。」

「…ディアナさん、孤児院を増やしてスラムの子供達を救うって言ってました。それがきっと「役割」なんですね。最後に会えなかったのが悲しいです。」

「孤児院を…そうか。
生きていれば、いつか会えるかもしれない。俺たちは必ず生き残ろうな」

ヨウメイは深くうなづいた。

2人はメインシティを目指してその日はトレインで一夜を過ごした。


一晩かけて列車はメインシティへ到着する。
目指すはここより沿岸部の海辺の街だ。

ユノはヨウメイを連れて列車を降りると、タクシーに乗る。

行き先は「ハトムギ園」

初めてのスラムの外の景色にヨウメイは釘付けになっている。生まれて初めて見る海も、明るく輝く太陽も、遠くに見える地平線も。全てが美しかった。

やがてタクシーは目的地についた。

「ハトムギ園」は町外れの山の中腹に建つ小さな施設だ。
ユノはインターホンを押す。

『はい、どなたでしょう?』

明るい男性の声で返事が来る。

「俺だ。スラムのユノ。花売りのコウタはお前か?」

『え?…ユノくん?よく来てくれたね!今門を開けるから、どうぞ!』

通用口の門の鍵がカシャリと外れた音がした。

ユノとヨウメイが門を開けて進むと、奥から爽やかな笑顔の長身の男性が走り出てきた。

「ユノくん、久しぶりじゃない!来てくれて嬉しいよ。ずいぶん大きくなったねえ。」

「そりゃコウタも同じだよ。またデカくなって。久しぶりだな」

2人が再会を喜んでいると、ユノの後ろからヨウメイが不安そうに顔を覗かせた。

「あれ、もう1人お客さんだね。この子は?」

「ああ、この子はヨウメイ。ヨウメイ、この人はコウタ。俺がガキの頃スラムでよく遊んだ兄貴みたいな人だ。今はこのハトムギ園で保護司をしてる。コウタ、相談があるんだ」

ヨウメイを見て察したコウタがうなづく。

「うん、そういうことか。とりあえず中に入って話をしよう。」


3人はテーブルを囲んで座った。
ユノはスラムから脱出した経緯を話ししている。

ヨウメイは何か緊張して、目の前に出されたオレンジジュースにも手をつけずに黙っている。

「それでコウタ、この子を預かって欲しいんだ。俺といるとこの子に危険が及ぶ可能性がある。」

ヨウメイはビクッとしてユノを見上げる。

「ふむ。分かった。ここのセキュリティは万全だから、万が一奴らがかぎつけてもちゃんとヨウメイさんを守れるよ。任せて」

「ありがたい。急に来てしまって悪いな。」

「いざという時に頼って欲しいって言ったのは俺だよ?来てくれて嬉しかったよ。元気なこともわかったしね。
ヨウメイさん、急なことで驚くだろうけど、今日からここが君の家だ。君が大人になるまでここで生活をしてもらうよ。他にも仲間がいるけどみんないい子たちだから、きっとすぐ仲良くなれる」

「え?あの、私…」

戸惑うヨウメイにユノが言う。

「ごめんな。コウタのところでいろんなこと勉強して仲間と遊んで、幸せになれよ」

ユノは立ち上がるとコウタに礼を言って握手をした。

「え…?待って、兄さんは?どこかに行っちゃうんですか?嫌!」

部屋を出て行こうとするユノにヨウメイは後ろから抱きついた。

「私の名前をつけるのはあなた。今つけてください。あなたに一生使えますから。そのために生きてきたの。行かないで。私をちゃんとあなたのものにして」

ヨウメイは青い瞳からポロポロと涙を流してユノを見上げる。

ユノはその頭を優しく撫でた。

「まだ、そういうセリフを言うには若すぎるぜ。いいか、そういうのをここでリセットするんだよ。俺のためだとか、あそこで教え込まれたこと全部。一回0にして、それから色んなこと決めるんだな。
お前がそうして大人になったら、ここを出て好きなようにすればいい。」

ユノは滅多に見せない優しい笑顔を見せた。ディアナにさえ見せたことがなかったかもしれない。

「元気でな。」

「ユノ兄さん!!ユノ兄さん!!うわあああん!!」

コウタに抑えられて泣き叫ぶヨウメイの声を背に、ユノはドアを開けた。

「必ず会いに行くから!!」

ヨウメイが叫んだ。その声は何かユノの深いところに響いたように感じた。

振り返らずにドアを閉める。


ハトムギ園を出て海を望みながら山を下っていると、もしかしたらママは、ここまで読んでいたのではないかとの思いがフッと浮かんだ。

ユノが本当はしがらみを離れ外に行きたがっていたことを知っていて、

ヨウメイを利用しないと分かっていて、

ユノに託せばヨウメイを暴力の世界から逃すと、分かっていたのではないか。

これこそがママの思惑だったのではないかと。

あの人はそういうところがあった。

人員のためとかいって片っ端から捨て子を拾って育てていたのも、子どもたちを見捨てられなかったからだ。そういう人、と思うには買い被りすぎだろうか。

そんなこと思ったら急に涙が出てきた。

ディアナもママのその信念を継いだのだ。そのためにあそこに残った。

第九砦にいて、泣いたことなんてほとんどなかったユノだったが、ハトムギ園からの帰り道は初めて、声を上げて泣いた。人目も気にせずにしゃくりあげながら歩いた。まるで子供みたいに。
歩きながらライターでママの残した手紙を燃やした。

「それはきっと正しいわ」

ディアナの声が聞こえたような気がした。



それから10年が経った。


ユノはメインシティの繁華街で、マフィア時代に培った知識でひっそりと探偵事務所を開いていた。

名前も変えた。
ママが偽名を使う時によく名乗っていた「草壁」、名前は適当に「アキヒロ」。

細々と生きていくには1人で十分だと思っていたが、流石に最近仕事が増えてきて、事務員を雇うことにした。

早速今日面接に来る。20歳の女の子だそうだ。
女の子は、時間の5分前に事務所のチャイムを鳴らした。

「どうぞ」

入ってきた女の子を見て草壁は固まってしまった。忘れるはずもない。青い目でエキゾチックな顔立ち。

「こんにちは。面接に来ました。お久しぶりです、ユノ兄さん。…いえ、草壁先生」

「ヨウメイ…?おまえ、何してんの?」

「何って、事務の面接ですけど。私、やっと大人になったんです。大人になったら好きに生きろって言ったのは先生でしょ?それに、私もうヨウメイじゃありません」

草壁は面食らって吸おうとしていたタバコをぽろりと落としても気づかなかった。

「今の名前は「由美恵」です。でもね先生、いつかは私の名前、付けてくださいね。私ずっと先生にお使えするって決めたんですから」

まだ採用ともなんとも言ってないのに、由美恵は勤める気満々でニコニコしている。

「はぁ、あのなぁ…」

草壁はため息をついて頭を掻いた。
断ろうかという思いが頭をよぎったが、目をキラキラさせてそこにいる由美恵を見たら、何だかこれもまた運命かと思えて笑えてきた。

「ハハ…まぁ、いい。じゃあ、今日から早速頼むよ。仕事教えるからこっちへ」

「はい!」

スラムを出てから久しぶりの再会を果たした2人はこうして共に働くこととなったのだった。


ディアナや闇猫がその後どうなったのか?
それはまた別のお話で。














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